経緯

ここまでこじれてしまった築地市場移転問題。ちょっと整理してみよう。

鈴木都知事時代、老朽化した築地市場現地再生計画の元、種地(現在の勝鬨門から立体駐車場、第二冷蔵庫、厚生会館付近)を用意して建て替えようとした。

青島都知事が引き継いだものの、やり始めてみたら市場を運営しながらの工事は、非常に危険で交通渋滞も悪化、市場運営に支障が出ると言う事で、市場の組合(現在の移転反対派)の猛反対が起こり巨費(380億円)を投じたにも関わらずついには中止となってしまう。

実際、2009年度も繁忙期の12月だけで20人近い交通誘導員を増員したにも拘らず100件近い交通事故を場内で起こしている。つまり既に場内の交通導線不良は致命的で、工事用車両が開市日に場内に進入した場合の危険度は計り知れない。

現在は、その種地はいつの間にか仲卸や大卸が使いだし、ちゃっかり練り物等加工食品の荷卸や出荷や駐車スペース(その管理や集金は都ではなく、仲卸組合が行っている)に使われている。つまり現地整備に必要な種地はもう無いのである。


ここで築地市場の業界内(現在の移転反対派)から「豊洲移転」と言う話が出てきて中央区は大慌て。(石原知事就任前)
ttp://www.city.chuo.lg.jp/kusei/kuseizyoho/tukizisizyo/1007saiseibikakunin/index.html

1. 業界の一部が主張する豊洲地区の具体名をあげるなど、これまでよりも移転を進める姿勢が伺われ、現在地での再整備を確認してきた東京都卸売市場審議会や築地市場再整備推進協議会の決定を無視するものである。
2. 最終的な調査検討結果を出す前に、業界の意思を確認することは、移転反対の意見を封じ込めることとなり、非民主的な進め方である。
3. 業界に対して、場外市場や本区も含めた地域関係者の理解と協力を得るよう求めていることは、行政が本来果たすべき責任を他に転嫁するものであり、地元区としては容認できないものである。

これは平成10年なので、青島都知事時代の話。
つまり、豊洲移転は石原都知事が利権欲しさに…という陰謀話は、これでおしまい。

業界の一部って言うが、本当は当時の築地市場長さんが移転先候補地を学識経験者と組合(現在の移転反対派)と相談して、都議会や何も仕事しない青島都知事を無視ししてぶち上げた豊洲移転構想ってのがもっぱらの通説。(まぁ青島都知事の何もしないっぷりに業を煮やしたのかもしれないけどね)

さて、こうなると中央区としては大変!
人口は減るし、店も減るし、区税収入も減る。
地元経済側は、築地市場に収まりきらない場外市場まで豊洲に収容されてしまうので、経済的地盤沈下の原因になるから大反対をする。

一方、場内の組合の半数は、移転先での用地補償が正規の面積しかもらえない事がわかり大反発。(不法占拠した面積までは保証してくれない)

築地市場内に構えている事務所のほとんどは長年の利用の間に通路にまでせり出し、冷蔵庫を置いたりして不法に場所を取っている。もともと水産仲卸内の道路スペースは、ターレーが相互通行出来る幅があるはずだが、現状1車線状態。
当然移転先のスペースは、不法占拠した面積までは確保されない。
つまり売り場面積が狭くなる→売上が落ちる。で大反対。
また、売り場の位置も集客上重要な問題(やはり大通りに面している方が良い)だが、既存権益(そこそこ売れている店)を無くしてまで、移転なんてもってのほか。

ここで、築地市場内は真っ二つに意見が割れる。その比率はほぼイーブン。移転反対派は、地元経済の地盤沈下を懸念する中央区と一緒になって、反対運動を始める。

一方中央区は、都から
築地市場地区の活気とにぎわいビジョンづくり委員会の設置
を持ちかけられ、まぁそれならいいか…と、中央区は折れる方向に進む。

そこへ、石原新太郎が東京都知事に選出される。(平成11年4月)

都の問題となっている築地市場を見学した石原知事は、あの有名なセリフ
「狭い・汚い・危ない」を発して現状を認識する。

四面楚歌となった移転反対派の場内業者は、大型プロジェクト一律反対の都議会共産党に泣きつく

反対派は「オリンピック誘致のために築地を潰そうとしている」と論理をすり替え、共産党とマスコミを巻き込んで一大キャンペーンを実施。これが前例がないほど大成功。(色々一言多い石原知事は、マスコミにとって叩きやすい餌食だった為かもしれない)

そこへさらに、豊洲の土壌汚染問題が発覚。
これで消費者団体が反対運動に参戦

東京都は「豊洲に問題(環境汚染)が無い」とは言えない。かといって、「築地はもっと危険(環境汚染上も衛生的にも老朽化も)だ」とも言う訳にもいかない。

  • なんせ築地市場は、野良猫、ネズミ、カモメ、カラスといった病原菌の媒介生物の動物園状態、どんなに掃除をまめにして仲卸業者が頑張っても、どうにもならない。
  • おまけに地下には、放射能汚染されたマグロが埋まっている。(半減期2回経過してるけどw)
  • ネズミを殺すための粉末薬剤が野ざらしで置いてあって、いつ魚に粉が舞ってもおかしくない。
  • 入場が禁止されているはずの観光客がベタベタ魚に触る(外人だけでなく日本人のマナーも最悪、見学に限って自粛要請が出ているが観光目的の入場は平成20年度から禁止されている)
  • 場内の年間交通事故件数は、毎年約400件以上(四捨五入すると500)
  • 毎日数台の救急車が入場するにも関わらず、入場後救急車が現地に到着まで非常に時間がかかる(場内のトラックやターレーが救急車の走行を邪魔するため)
  • 鉄骨やコンクリやレンガやアスベストが降ってくる程の老朽化

つまり、築地市場の移転の本質を都は言えないのである。


ここまで経緯を読めばわかると思うがこの反対運動は、築地市場の中の都合を石原問題にすり替えて周りを巻き込んだハタ迷惑な「反対の為の反対」運動なのである。

この集団は
移転も反対だが、構造を変えてしまうほどの改築にも反対な訳。
現状維持が彼らの望み。

だが以前の記事でも書いた通り、鉄道輸送に最適化された市場構造(建物配置)では、補修が完璧に行われたとしても、場内の渋滞による事故や環境汚染の対処にはならない。

だから豊洲の構想図には、仲卸を密閉空間にしてその中に入ることなくトラックは魚の積み下ろしが出来る構造になっている。
また、近年築地の取引量は商店街の没落と共に減少傾向にあり、大型店用のディーラーの方が増えている。(市場外取引)にもかかわらず、場内の業者は既得権を主張し、ディーラーは狭い場所での取引を余儀なくされている。だから、豊洲の構想図には大型ディーラーの為のスペースが用意されている。

ところが、それは(他人が儲かるのは)面白くないらしく、それも反対派の気に障る話らしい。

そこで、仲買人たちは豊洲移転反対運動を起こした。
(もともと現地整備を中止に追い込んでおきながら)

新銀行東京問題やら、移転費用高騰や、オリンピック問題まで持ち出して、都の税金を無駄に使うな!と大騒ぎしているが、石原知事就任時の都の財政は、夕張市のような破たん寸前状態だった。

しかし、石原知事就任後の無駄排除と、新たなビジネスモデル構築によって、現在財政的に非常に豊かな政令指定都市となったのは、皆も知るところである。
つまり、ムダ金を使うような知事ではなく、むしろ必要な事にしかお金を使わないドケチ知事なのかもしれない。

更に近年、都の水道技術を海外に売り込む等、都の財政にこれだけ寄与した知事は過去誰もいない。(と思う)