築地市場移転先、豊洲新市場予定地で噴砂確認
豊洲新市場予定地で地震後、液状化によるものと思われる噴砂が確認されました。しかしこれはまだ着工前(液状化対策前)の現象ですから、全く問題ありません。
ネット上でデマが飛び交っているので、ここで
以上3点を説明します。
液状化とは何か?
液状化現象とは、地震の際に地下水位の高い砂地盤が、振動により液体状になる現象。これにより比重の大きい構造物が埋もれ、倒れたり、地中の比重の軽い構造物(下水管等)が浮き上がったりする。(Wikipediaより)
液状化を手押し荷車の中に泥土を入れ実演したビデオ↑
液状化する為の条件
地盤の液状化現象は次のような条件が重なった地域に発生することが判明している。
- 粒径がそろった砂質土層からなる。(間隙が多い)
- ルーズな締り度である。(体積変化しやすい)
- 地下水位が高い。(飽和状態にある)
- 拘束力が小さい。(上載圧力が小さい)
日本の大都市や埋立地は、このような条件を満たしたところばかりで、地震対策には万全の注意が求められることになる。
どうすれば液状化による被害が防げるのか?
地震をコントロールすることは不可能なので、地盤が持つ液状化の条件を除去すれば良い。
つまり上記条件を除去する訳。
- 間隙を少なくする
- 地震による体積変化を抑制する
- 地下水位を下げる
- 拘束力を大きくする
<液状化対策工法の原理と主な工法>
- 密度の増大(締固め)
サンドコンパクション・バイブロフローテーション・重錐落下工法・振動棒工法
- 間隙水圧の消散
柱状ドレーン工法(たとえばグラベルドレーン)・排水機能付き鋼材
- 固結(粒度・拘束)
深層混合工法・注入固化工法(粒度の改良と拘束力の増大)
- 飽和度低減
地下水低下工法・ディープウエル工法
- せん断変形抑制
矢板囲い工・連続地中壁工法(間隙水圧の遮断)・排水機能付き鋼材
東京都HPより豊洲新市場の計画図を見てみよう。
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/dojou/
これらの図を見れば一目瞭然
- 地下水の移動を防ぐために止水壁の設置(体積変化の抑制)
- 地盤中に砂杭を打設して地盤を締め固める(間隙を少なくする)
更に地下水汚染防止の為に行っている
- 地下水汲み上げによる地下水位の低下(飽和状態の解消)
これらの措置を行う事で、液状化対策を計画している。
特に豊洲新市場は護岸に隣接する為、止水壁の設置によるブロック化と、各々のブロックでの地下水くみ上げは側方流動の際に被害を最小限に抑える効果が期待できます。
これでダメな規模の地震が発生したら、もはや東京都中央卸売市場が稼働する意味がないです。つまり、消費する皆さんの家庭が完全に倒壊し、道路はめくれ上がり、ビルは倒壊し、生鮮食料品の流通どころの騒ぎではない。という事です。ヘリコプターによる空輸以外の輸送手段がない状態です。
そして、一部のデマに見受けられますが、「液状化して噴出した汚染された泥土が市場の魚を汚染する」という話は全くのデタラメです。以前も豊洲新市場の汚染除去をレポートしましたが、水にも溶けない、気化しない、熱にも反応しない安定した汚染物質は、確かに地中に残ります。噴砂と一緒に地表に噴出する可能性はあります。が、築地市場でも泥水や泥土がかかったような魚介類は出荷しません。当たり前です。
つまり、噴砂と一緒に地表に噴出した「水にも溶けない、気化しない、熱にも反応しない安定した汚染物質」は、場内のお掃除の結果、周りに被害を与える事無く下水に流れて行きます。
参考
豊洲新市場の汚染除去実験 レポート
http://d.hatena.ne.jp/ottyanko/20100722
http://d.hatena.ne.jp/ottyanko/20100817
そして何より、現在の豊洲新市場予定地は全くの更地状態であって、液状化対策前の状態です。そんな状態の埋立地が地震で液状化するのは当然です。雨が降って舗装前の地面に水溜りができるのと同じように当然の事です。
以下、Twitterで以前土木技術者をされていた、大貫剛さんの解説がまとまっていますのでご覧下さい。
http://togetter.com/li/114267
この記事で述べなかった部分をご紹介します。
ビックリされた方も多いと思いますが、近代的な埋立地では危険はありません。これから埋立地に建設される施設に関しては言わずもがなです。古い埋立地は、順に対策を行っていますが、古くなるとかえって液状化しにくくなることもわかると思います。
戸建は深い基礎を作らないので、心配はあります。特に、原理的に海から遠くても盛土地盤では起き得るので、新興住宅地では適切に施工されたか充分注意すべきと思います。段々になっている丘陵部ではもともと水が抜けやすいのですが、田んぼに盛土した場所などは液状化しやすいです。
液状化に関する知識は一般知識とは言いがたい話ですが、ちょっと調べればこういった情報は簡単に入手できます。広めてしまった方は、責任を持って修正して下さい。
そして明記すべきは、こういった一般の方々の不安に付け込む形で、築地市場移転反対派の中の不埒な輩(某地質学者?環境学者?…環境ゴロツキ学者?)が、新聞紙上で不安を煽っています。こういった有識者が液状化のメカニズムを知らない訳がありません。デマの確信犯です。それを皆さんお忘れなき様に。
参考
東京都中央卸売市場HP
「東北地方太平洋沖地震」の発生に伴う中央卸売市場の対応について
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/news/22/jishin/index.html
豊洲新市場予定地の一部における墳砂について
1 予定地での噴砂の発生状況
- 5街区、6街区で噴砂を確認
- 7街区で確認中
2 応急措置の概要
- 土壌汚染対策法による「当該土地に人が立ち入ることができない措置が取られている」ことに加え、本年夏に実施予定の土壌汚染対策工事までの間、噴砂の飛散防止のためのシートを敷き、安全性を確保する。また、土嚢によるシート保護を行う。
- 降雨による拡散防止のため、噴砂の 外周部に側溝等を設置する。
- なお、現在7街区を確認中である。新たな噴砂が発見された場合には、同様な応急措置を行う
追記
浦安の液状化について
本記事の趣旨(豊洲新市場の魚が地震による液状化で危険になる事は無い)と異なりますが、「じゃ浦安はどうなの?」と言う質問に、軽く触れて置きます。
地震直後の報道では、埋め立て地全体で液状化が生じたような印象を受けたが、実態は違った。明らかに場所によって被害に差がある。
被害状況を整理すると、最も液状化被害が大きいのは新しい埋め立て地の内陸側で、次に被害が大きいのは古い埋め立て地である駅周辺、最も被害が小さいのは新しい埋め立て地の海側だった。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20110321/264385/
まず浦安市全土で液状化による地盤の被害があったわけではないようです。(下水道の被害の為、広範囲で上下水道に影響が出ていますが)液状化の危険度に対する対策が追いついていない場所が被害にあったと考えるのが適当でしょう。
そして豊洲新市場は様々な反対運動のおかげ?で、これでもか!ってレベルで対策されています。特に平時に地下水を汲み上げて飽和状態を解消すれば液状化そのものが防止される事は、液状化のメカニズムが理解できた方には自明の事と思います。私も調べてみて「ここまでやるの〜」と驚きました。平時だったら税金の無駄と言っていたかもしれませんね。
実際、震災時俺も「液状化が起きたか?起きなかったか?」に目が行っていたのですが…よくよく考えてみると「起きたからって何なの?更地ぢゃん」と気が付いて、冷静に「何が危険なのか?」考えてみたら、別に何も問題ない事に気が付いた次第で…(笑) 震災パニックって怖いですね。
それにしても豊洲新市場について記事を書こうと集めておいた資料が、こんな形で役に立つとは…
補足
現在の築地市場が液状化を免れた理由
これはあくまで推測ですが、築地市場及びその周辺では日々大量の地下水を使っています。地盤沈下の弊害もありますが、先に説明した条件の「飽和状態の解消」が日常的に行われているという事です。
ちなみに被害状況は、全中央卸売場の中で一番大きいです。
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/news/22/jishin/jishin2.pdf
耐震補強ブレースの変形が水産物本館3Fで確認されています。中央卸売市場の中で唯一建物の主要構造に被害があったのが築地市場です。決して揺れが小さかったとか、地盤や建物が丈夫と言う訳では無い事がわかると思います。
☆☆☆☆☆☆まとめ☆☆☆☆☆☆
築地市場移転が急務な訳
移転先(豊洲)の汚染除去の実態1
移転先(豊洲)の汚染除去の実態2
築地市場移転騒動
急転 築地市場移転へ
豊洲新市場予定地の液状化について (当記事…号外)
新市場の設計はこれでいいの?(予定)
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