IT介護士って資格が生まれないわけ?

IT化の遅れている、という言葉すら古い感があるが、存在はどうやら不滅のようなので使います。IT化の遅れている企業で、そういった部署担当になると、社内IT環境保全と言う名の使いっ走りの仕事が待っている

しかし、そういった使いっ走りに依存する企業が、(ITの分野やITを利用して)劇的な成長を遂げた例を聞いたことがない。
そう、彼らはIT介護をしているだけなのだ。

サポートでもヘルプでも教育でもない。それは「介護」だ。

なぜこの言葉を使うかと言うと、老人介護をした結果として能力が衰える事はあっても、能力が向上することはない。(一時的に回復する例は除く)別に介護をバカにしたりする気は更々ない。年齢を重ね身体的な能力が衰え、自立歩行が困難になったり、食事に不自由したりする方々を、介護する事はとても大変で頭の下がる行為だ。

しかし企業が、営利団体が、競争社会の組織が、そんな状態で良いのだろうか?

そういった企業のIT音痴な従業員に対し介護を行っても、彼らの能力が向上することはない。枝葉の現象に対し、その対処方法をケースバイケースでやって見せたところで、彼らの頭に整理してスキルが蓄積することはない。だから単なるロボット的な反応技術を学習するのみで、かえって有害である。ダイアログの質問に、はいはい答えてウィルス侵入を許しちゃったり、見当違いの操作(彼らにとっては類似ケースなのだろうが)でPCを壊したり…

このご時世に未だにPCを使いこなせないでいると言う事は、この人たちは本質的にPCが嫌いなのだ。出来る事なら職場でPCを見たくもないのだ。根本的に一から勉強するなんて、こいつらにとってはもっての他なのだ。

つまりIT介護はIT音痴従業員のPC操作を危険な領域に近づけITを使った職務遂行能力を落とす効果があるわけだ。たいてい、そういう会社のそういう従業員は「私、プログラマーじゃないしー」「もっと使いやすいOSを作るべきよ」等と言って、とにかくPCを勉強する事から逃げる言い訳を次から次へと考えだす。そして、その「訓練」が、涙ぐましいほど頻繁に行われる為、彼らの学習回避能力は極限まで高まる

これは、仕事のできない奴が自己保身に長けた人間に成長するのと同じプロセスとも言えよう。

営業社員に対する、ITリテラシーの習得を甘く見ていた企業が、P2Pで顧客情報を流出させてしまう例も、未だになくならない。昨今の事例で言えば、家庭に持ち帰った仕事のデータが、家族(おそらく息子?)が使っていたWinnyで外部に流出してしまった某保険会社のように、どんなに企業に優れたIT担当者がいても、どんなに情報セキュリティを厳しくしても、Pマークを取ろうとも、現場の「訓練」された極めて優秀な「ITリテラシー回避能力者」は、その穴を付いてくる。

もちろん、それに対しIT担当者が様々な漏えいケースや介護ケースを想定し、介護対策を練っていくわけだが、何と不毛なバトルだろうか。

ITにおける介護は、職務能力をマイナス方向に成長させるだけなのだ。

昨今、ITパスポート(ひどいネーミングだけど)等の資格試験が、そういった問題解決の為に啓蒙を一所懸命やってはいるが、こういった事は「経営者」に対して啓蒙しなかったら、絶対に無理なのである。
その資格試験がキチンとカバーしているかは別問題にしても、そういった免許制度がITにも必要と言われて久しいが、全くと言ってよいほど普及していない。この手の基本的な内容の資格試験が普及しているのはせいぜい新卒の就職希望組か、正社員を目指す派遣労働者位だろう。現場で働くおっさんに普及している話など、(その資格試験の宣伝を除いて)聞いたことがない。

運送業界等では、自動車運転免許証が必須で、運転する乗り物によっては2種や大型や特殊など、更に厳しい内容で国家試験と免許証と、そのチェック(更新や違反罰金制度)が行われている。当然業務に使う免許証なわけで、みんな必死で取得し違反者はそれ相応の罰を受けている。おっさんもおばちゃんも必死になって教習所や試験所に通っている。

職場でのIT活用に関しても、本来、同様の事が行われて然るべきはずなのに、つまり、自動車運転免許証の免許停止や取消は、危険なドライバーを道路上から排除する為に行われているわけで、企業でITを使うなら、危険なユーザーを職場から排除するなんらかの制限を設けなければ、ある意味やりたい放題になってしまうわけだ。

IT音痴が職場でネットに接続したPCを使うという事は、車で言えば無免許(それも無学習)で高速道路を走るようなものである。バックで車庫入れもできず、標識の意味も分からず、警告灯の意味も分からず、S字もクランクも脱輪するような、教習所の第一段階もクリアできない人間が、仕事で車を運転するようなものだ。

まして顧客データを扱う仕事だとしたら、それは、第一段階もクリアしていない人間が、十数人の客が乗った高速バスを運転して東名高速道路をつっ走り、行先が一方通行地獄で道が激狭で歩行者だらけの祖師谷大蔵駅前に向っているようなもの。

しかし、そんな会社のいかに多い事か。
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毎日新聞さん、おたくの事ですよ!